石黒の方言

生 活 編  
2100
音 声
〔Narrator〕
大橋トシヲ
百姓仕事は、えつまで たってもおぇたすぇた(おえたへた)がねぇがね 百姓仕事は、いつまでたっても終わりがありませんよ

ねら、大水が出てるすけおおかわにえぐなや きみたち、増水しているから本流に近寄るなよ
やあおおきに

     (古語→オオキナリ)
やあ、そんなことありませんよ
きょんなじょは、おおきに〔さんざ・さっつぁ〕お世話になって、もうしゃけぇねぇかったえね 昨年中は、大変〔いつも〕お世話になり申し訳ありませんでした
おぅや そうしたが いいかえのう そうですね、そうしたがいいですかね
トッツァ、ほんに おおごくろぅだったのや 父さん、本当に大変なご苦労でしたね
えま、おまぇが、あいまちしょならおおごとだえね 今、あなたが怪我をしたら大変ですよ
おまえたは、おおざくだんが稲刈りも てぇえへんだこてぇ お宅さんは、田の作付け面積が広いから稲刈りも大変でしょうね
昔だけら、おら、はえおおどしょりだね 昔なら、自分はもうかなりの高齢者ですよ
蔵のおおばこの中に、客布団が何組もあるがんだがなえ 土蔵の長持ちの中に、お客用布団が何組もあるのだよね
この、おおまくれぇが、ほんに マンマ えっぺぇ 喰うが喰うが

      (大・飯・喰らう)
この大飯食いが、本当にご飯をたくさん食べるわ食べるわ
きょんなは、手を へっぽしょっておおめに あったえね

      (古語→目ニアウ)
去年は、腕を折って大変な目にあいましたよ
おが下駄を、誰か へえて えったな

      (己がー)
私の下駄を、誰か履いて行ったな
おが、ずすばん してえるこてえ
私が、留守番しているよ
きょんな ばっかしゃ、雨がふらんでおかざくは 駄目だったえねぇ

      (陸・作)
去年ばかりは、雨が降らないで畑作は駄目でしたよ
形が何だかおかしだなえ 形が何だかだね
こどしゃぁ、雨ばっかでおかもんが わりぃのう

      (陸・物)
今年は、雨ばかりで畑作物のできが悪いですね
おかるぅございましたねえ(お膳を下げるときの言葉) 御粗末でした
おかんまやから、しいな籾を持ってこえや

      (床・馬屋)
馬屋の隣にある部屋から、しいな籾を持ってきなさい
おがんは、どれだえ

      (己ー)
私のものは、どれだね
ねら、そんげにお(う)きょすいてえるとなぁ、そのうち、ほえずることになるぞ
       
     (@浮きつくAお興つくBおきゃん)
おまえたち、そんなに興に乗りすぎているとね、(喧嘩したり転んだりして)そのうち泣くことになるよ
おぎんしまから、嫁もらったえね
荻の島から、(高柳町の集落名)嫁もらいましたよ
いいから、こっちへおくせぇ(えくせぇ) いいから、こっちへよこせ
おらオジはおくぶとりで二十歳近くなってから、でっかくなったえね うちの次男は奥手で二十歳近くなってから、成長したのですよ
こんにゃは、めんながおけぇ喰って えよっそ
今夜は、みんながお粥を食べていましょうよ
おごっつぉさまになりました 大変ごちそうさまになりました
あこんちの、おじどもは めんな旅へ えって せえこうした ふうだんがなえ あそこの家の次男以下の子どもは、みんな、よそで成功したらしいですね
ねらねら、トットが逃げぇとうおせぇて(つかめてくれや
君たち君たち、鶏が逃げたよ、捕まえておくれよ
じさ、クエを ぶつすけ、おせぇててくれね おじいさん、杭を打つから支えていてくださいな
あのおつこが酒飲んであたけたってば、おさきだてならんがんだぜ あの男が酒を飲んで暴れ出したら、押さえなだめることはできませんよ
ジサ、おさま えくつに なりゃったえ
じいさん、あんたいくつになりましたね
※「おまえ」く比べ親しい人に対して使う
おさまら、かみ〔上石黒〕の祭りの相撲に出るんかえ あんた方、上石黒の祭りの相撲大会に出るのですか
おさんたちばっかしゃ、ナマツケネェことばっか えって えやなえ あんた方って、そんな卑猥(えっち)なことばかり言っていやですよ
おらオジは、そこの家え、えねぇろかねえ

〔次男以外の男子 小父・オヂチの略〕
うちの次男坊は、お宅にいないでしょうか
あぶねぇすけ、おしくんなてぇ 危ないから、押さないで
あのジサ、俺をおしこくって転ばしたんだえね

あのじいさん、私を押し飛ばして転ばしたのですよ
やっと、おじごんぼがモコにえってくれましたえね

    (卑下、軽蔑の意味)
ようやく、末の弟が婿に行ってくれましたよ
おじどもはめんなタビへえってますがね 次男たちは皆県外に行っているのですよ
ほんにごしょうござった ほんとうに有り難うございました
盆が来るすけ、おじょだんを磨かんけらぁ ならんがのぅ、バサ
盆が来るから、仏壇を磨かなければならないよ、婆さん
さあさぁ、おすずかに

〔お客が風呂に入るときなどにかける言葉〕
さあどうぞ、ごゆっくりと
エモが、やっこくなったかおせぇてみてくれや
芋が、軟らかくなったかさわって(押さえて)みてください
きょんなは、おそえきで ナガシロごしゃえが てぇへんだったてえぇ 去年は、春に降る雪で 苗代づくりが大変だったよ
おじさ、おらアニは、まだ何にも知らんがんだすけ、よくおそえてやって くんなせえ

おじいさん、家のセガレは、未だ何も知らないのですから(世事を)、よく教えてやってください
トッツァ、大神宮様におそねぇ餅を あげてくれや
お父さん、大神宮様(神棚)にお供え餅を供えてください

おっかぁオラ、腹がへった

 (カカの丁寧語→オカカ) 
母ちゃんボク、お腹がすいた
ネラ、戸にコエスキを おっかけて置くな そうえったろ おまえたち、戸にコスキを立てかけて置くなと言っただろう
あこのおっかさも、来てくりゃった えね
あそこのお母さんも、来てくださいましたよ
この子はおっかながりで、しとりで、ねらんねぇがんだえね この子はこわがりで、ひとりで寝られなれないのですよ
じろへ足えれてえると、オキをおっつける 囲炉裏へ足を入れていると、熾きを押しつける
ほんに、背の でっけぇおつこ ほんとうに、背の高い
あの人のおつこおやは頭のいい人だったがのう あの人の男親は頭のよい人でしたがねえ
おつこっ子でも おんなっ子でも、達者で んまれてくれれば、そんで いがね 男の子でも女の子でも、健康で生まれてくれれば、それでいいですよ
あこのモコは、おつこっぷの いいシトだなえ あそこの婿は、男ぶりのいい人ですねえ
オマエタのおっさまは、今どこに えって えやるえ

      (弟ー)
お宅のご次男(長男以外の男)は、今どこに行っておられますか
おっちゃのショは、ねついすけのう 落合(集落名)の人たちは、丁寧(言葉遣いなど)だからなあ
そこのおっちゃんは、えくつに なりゃったえ お宅の御次男は、何歳になられましたか
おっつきに、にぎりめしを食べてくんなせえ 本膳前の軽い食事に、握り飯を召し上がってください
へぇ、おっつけ着いたころだと思うでもなえ もう、やがて着いた頃だと思うけどね
ワッパ(メンツ)のマンマは、おっつめねぇように よそうんだぞ わっぱ(曲木製の弁当箱)のご飯は押し詰めないように盛りつけるのだよ
おらトッツァ、おっとえな、出稼ぎから けぇって来たえね
ウチのとうちゃん、一昨日、出稼ぎから帰って来ましたよ
あこのバサが死んでがんはおっとしなだろうか なえ あそこのおばあさんが、亡くなったのは一昨年だろうかね
おつよ盛ってくらえ
お汁盛ってちょうだい
おじさのおつよぢゃわんが めえねぇ なえ おじいさんのお汁茶碗が見あたらないねえ
おつよじゃくしも、洗っておえてくれや

お汁杓子(木製)も、洗っておいてください
んじゃ、おっぱじめる それでは、始める
餅はおてのこが えっとう んめぇのう

      (お手・こ→窪)
餅は、つきたての試食が一番おいしいね
あこの家は、バサの親の家だすけおとしねぇけらぁ ならんがなえ あそこの家は、おばあさんの親の実家だから告げをしなければならないよ

そこのおとっつぁ、どごへ えぎゃったね お宅のお父さん、どこに行かれましたか
ヨメの腹へ次の子が へったげでおとみっこが ぐずぐずえうようになったえね

      (弟見・子)
ヨメが次の子を妊娠したらしく、末っ子がぐずぐず言うようになりましたよ
おんにも、あんちゃののとおんなし〔おなしがんを買ってくらえ ぼくにもも、兄ちゃんのと同じものを買ってください
ねら、おにごとしょえや 君たち、鬼ごっこしようよ
おばさどうしゃったえ

おばあさん、どうしましたか
おかげさんで、おばどもは めんな ミスギをしましたて お陰様で、次女以下の女の子はみんな結婚しましたて
おびゃあきは、えつですぃね

  (産屋明)
産屋明きは、いつですか
あねちゃ、おびやげえりしゃったかえ

長女のお嬢さん、うぶや帰りをされましたか
おまえどごのシトでえやったえ

※石黒では主に目上の人に対して使ったが目下の人に対しても使った。目下の人に対する場合は、「おめぇ」に近い発音
あなたは、どこの方でいらっしゃいますか

おまえた(おめぇさんたち)は、えつ けえりゃるえ あんたがたは、いつお帰りになりますか
十五夜祭りだって がんだんが、めんなでおみやさんに めぇってこっそ 十五夜祭りだというんだから、みんなで神社にお参りしてきましょうよ
きょは、ラジオ体操が終わってからおみやそうじを やったえね 今日は、ラジオ体操が終わってから神社の掃除をしましたよ
おめぇどうしたってがん きみ、どうしたというの
きょは、ジサの命日だすけおめぇた、めんなが仏壇におめぇりせや 今日は、爺ちゃんの命日だから、あんた方、みんなが仏壇にお参りしなさいな
ねら、おめしを よそわん内にご飯喰ったねぇか、バカどもが

      (御・飯)
あんたたち、お供え飯を供えない内にご飯食べたな、愚か者が
子供は、おめてばっか えても駄目だえね  子供は,叱ってばかりいてもだめですよ
おもえつけねぇシトに会ったえねえ 思いがけない人に会いましたよ
よんべなのラジオのナニヤブシは、おもしょかったねぇ 昨夜のラジオの浪花節は、おもしろかったですねえ
村のおもだちが、集まって決めた事だ

      (重立ち)
村の代表たちが、集まって決めた事だ
おもたっつらしな、オラ、えやだ

      (重た・辛し)
重たいばかりで無駄な、ぼく、いやだ
風邪が いくなって やっとおもよが飲まれるよぅに なったてぇ
風邪がよくなって、ようやく重湯が飲まれるようになったよ

おら、あこの家とは、昔からのおやくしょでね
うちは、あそこの家とは、昔からの親戚でね
まず、おやけへ 年始に えってくらぁ
      (大宅・家)
まず、本家へ年始に行って来るよ
アニ、そんげん ぶしょへげ おやしてえるんだねぇて せがれ、そんなに無精ひげを生やしているではないよ
仕事をおやしてから、あすびに えぐんだぞ 仕事をやり終えてから遊びに行くんですよ

おら、その日は、ずど様の祭りで峠へ えってえたがんだえね

私(私たち)、その日は地蔵様の祭りで峠へ行っていたのですよ
おらあたりは、まだ、すっけなハエカラな機械は ねぇがね

私たちの地域では、まだ、そんなハイカラな機械はありませんよ
さきな、おらしょは ヤマへ えったえね
      (ー衆)
さっき、うちの家族は、田んぼへ行きましたよ
ええ、おらせつねぇ下駄の緒が切れたえね あら、まあ困った、下駄の緒が切れたわ
おらちは、まだエネ刈りを始めねぇがんだがね
わたしの家では、まだ稲刈りを始めないのですよ
たまにぁあ、おらどこへも あすびに来て くらっしゃいの たまには、私の家にも遊びに来てくださいよ
隣近所でおりえぇがわりくちゃ、かなねぇんがのう 隣近所で折り合いが悪くては、かなわないですね
こらぁ、おれがんだえや これは、ぼくのものだよ
このけぇだんは急だすけ、おれる時に、きょつけろや この階段は急だから、下りる時に、気をつけろよ
えきの えっぺ 降るドコは、おろしは 造らんが いいがのう 雪の沢山降る土地は、本屋に付ける片屋根の建物(げや)は造らない方がいいですよ
おっかぁ、おろしをしてくれや かあさん、大根おろしをしてくれよ
終わりはつもんのウド取って来たいね 終わり初物のウド取って来たいね
おらんまは、おんなんまだすけ、おとなしがね 私の家の馬は、雌馬だから、おとなしいですよ
田えうぇのおんな(ご)しょを呼んで、コビリ(チョウハン)に しょてぇ
田植えの女性たちを呼んで、小昼(おやつ)にしましょうよ
また、おんなっこが んまれたえね また、女の子が生まれましたよ
あこのオバはおんなっぷりがいいんがなえ あそこの次女は、美人だね
女ぜぇにあぐしを、かくんじゃねや 女のくせにあぐらを、かくもんじゃないよ
トッツァ、柿をおんにもしとつ もえで くんなせぇ 父さん、柿を私にも一つ採って下さい

女どもは田えうぇして、男どもはネェ運びしてくれや

女たちは田植えをして、男たちは苗運びをしてください