民具補説
                大カケヤ

 私の家は今から110年ほど前に、火事に遭い、その時の家の再建には自分の村のみではなく、莇平村や小貫村からも、材木運搬などで多数の人達の応援を得てようやく現在の家ができあがったと聞いています。
 その時の家普請で使ったカケヤは、最も丈夫だと言われているケヤキ根株を使って作ったものでした。その大カケヤで家の上道具(うわどうぐ−梁)など大きなブナ材の組み立てによく使われたといわれます。作った当座は材料のケヤキが生であったため10貫目(約38s)はあったと聞いています。

 現在では、長い年月の間に乾燥してようやく片手で持ち上げられる程度の目方です。いつでしたか大分前のことですが、ある人にこのカケヤを貸したところ「これはよいカケヤだから是非とも売ってくれ」と言われましたが、祖先が作ったものであるので売れないといって持って帰ったことがありました。
 今でも、このカケヤを手にする度に、普請のときに高いところでこの重いカケヤを振り上げて働いた人たちの力に驚いています。

                      文・図 田辺雄司(居谷)