民具補説
          くさぼうき(草箒)
 終戦(1945)後しばらくは、未だどこの家でも畑のすみにホウキグサ(別名ホウキギ)を何本か育てていました。秋に根元近くから刈り取り、雨の当たらない軒下などに掛けて乾燥します。よく乾燥した頃に箕の中で葉も種子も一緒に手でもむようにして落としてから、はぎり(上下にあおり振ってクズを取り除く→民具篇箕参照)ます。残った種は、よく見るとシソの種によく似ていました。
 ホウキを作る場合は、茎の細いものは5〜6本を束ねて作りました。また、太い茎のものは1本の根本近くの枝を切り取ってそれを穂先が揃うように一緒に束ねてつくりました。(下写真)
 こうして作ったホウキは「草ボウキ」と呼んでいましたが、主にムシロを敷いた座敷を掃くときに使いました。 
 畳の上を掃くとホウキの先が堅いために畳を傷めると言われ、畳の敷かれた座敷はキビホウキが使われました。
 ホウキキビは、やはり、畑の隅の方に何本か植えて支柱をして倒れないようにして大切に育てていました。 ホウキキビ高さが2mにもなりやはり、秋に適当な長さで刈り取りよく乾燥、やはり箕の中で種を落とすのでした。このホウキの先は柔らかいため畳を傷つけることはないのでデイ(客間・仏間)などの畳の上を掃くときに使われていました(下写真)。
 また、ホウキグサの種は小袋に入れて最初は塩漬けにして更に味噌漬けにして味をつけたものをよく食べたものです。この味噌漬けは噛むとプツ、プツと音がしたことを憶えています。 また、余談になりますが、私が区長をしていたころに青森県の浅虫温泉に旅行したおりに、夕食の何品かに草ボウキの種が使われていたので、「まさか青森県まできて昔懐かしいホウキ草の種を食べるとは」と、他集落の区長さんと笑ったことを憶えております。
 文 田辺雄司 (石黒 居谷在住)