石黒の方言

生 活 編  
2100
音 声
〔Narrator〕
大橋トシヲ
頭刈りが終わったすけ、首ったまに めぇえた風呂敷を、めえめぇへ えってほうらいて来え 散髪が終わったから、首に巻いた風呂敷を、庭へ行って振り払って来なさい
ジサ、今年は、あの山のヘラで、ぼえを切ろうや

      (古語→保興)
じいちゃん、今年は、あの山の斜面で柴(燃料にする低木)を切ろうよ
あしたはぼえあげをしょや 明日は、柴〔しば→薪用の低木〕を中二階に上げる仕事をしようよ
えきのあるうちに、ぼえきりしねけらならんなえ 残雪のあるうちに芝木(薪)切りをしなければならいね
おらちは、きょは、ぼえだしだてがんだ 私の家は、今日は、柴をニオから家まで運ぶ仕事をする予定だよ
あのガキは、また喧嘩してほえずってらあ

  (吠える→泣きわめくの卑語)
あの子は、また喧嘩して泣きわめいているよ

あに、おまえトッツァから、ぼえまるけのしかた習えや
倅や、あんた父さんから芝木の束ねのやり方を教えてもらえなさいよ
おまえた、ぼえ山があるんが いいこてぇ あんたの家は、柴山〔ボイ山〕があるから良いでしょうよ
ねらぁ、トットが家ん中にへっとう、ぼえ出してくれや 君たち、鶏が家の中に入ったよ、追い出してくれや
苗を投げるぞ、ほえと(はえと)!
苗を投げるよ、はいよ!
ウドも、もう、めんなほうけたえや ウドも、もう、みんな成長して食用にならなくなった
山で鎌を、どっかへ やってそう、ほうしてバカんなって さがねて やっと めっけたてえ

山で鎌を見失ってね、それで必死になって探してやっと見つけましたよ
おさん達、めんなが、えぐがんかい。ほうしゃ オラも えごかな
あなた方みんなが行くのですか。それでは私も行こうかな
ほうだこてやぁ そうにきまっているでしょうが
ほったれ そうにきまっているでしょう
ぼうでんきを、持って来てくれや

      (棒)
懐中電灯を、持って来てください
ことしゃ、ほうとえきが えっぺだすけ エキの けぇが遅えぞ
今年は、乾いた雪が多いから雪の消えが遅いぞ
えがんで、ほうべん 行かないで、幸いだったよ
いいすけ、ほげかまわんでおけや
いいから、放っておきなさいよ
そんげなヘラマに上がって、ほげずりおちんな

      (放り・落ちる)

そんな崖に上って、ずりおちるな
川へほげぶちゃってしまえたえね

      (放り・ブチャル)(放下)
川へ投げ捨ててしまいたいですよ
そこらえ何んかをほげなげておくなて 川その辺に物を放り出して置くなよ
マメめえたでも、鳩がめんなほげっこしたえね 豆を蒔きましたが、鳩が堀り散らしてしまった
カボチョの芽が、えっこに出ねすけほげてみたら腐ってえたえね カボチャの芽が、なかなか出ないので掘り返して見たら腐っていましたよ
こどしゃ、ぼごさま飼わっしゃるかえ 今年は、カイコ飼いますか
ねら、トットのボコボコする場所にベトをもっと えれてやれや
あんた達、鶏の砂浴びをする場所にもっと土を入れてやりなさいよ
ねら、きてみろ、きれげな星のよだぞ 君たち、出てみなさい、きれいな星空だよ
バサ、へらすみ起きにほしもち(かたもち)を あぶって くりゃんの

      (干し・餅)
おばあさん、昼寝起きに、オカキを焼いてくださいよ
あこのバサ、転んで手をほしょった〔ほっぽしょった〕てんがの あそこのお婆さん、転んで手をへし折ったそうだね
瓶のほぞを、しっかり しておけや
瓶のを、しっかりしておきなさい
ねら、ヘエがマンマにとまってるすけ、ぼえ あんたがた、ハエがご飯にとまっているから、追い払いなさい
エンガが、猫をぼっこ(た)くってえっとお

      (語源→ぼっかく)
犬が、猫を追いかけて行ったよ
ほっぱ(ぴーぴー)を作って鳴らそうえや 笛を(椿の葉を筒状にして作る)作って鳴らそうよ
ワッツェごしゃえで、まさかりの柄を ほっぽしょってしまったえね 薪づくりで、まさかりの柄を折ってしまったですよ
オラ猫が、ドラ猫をぼっこくってえったぞ 家の猫が、野良猫を追いかけて行ったよ
鳩が来たら、ぼってくれや
鳩が来たら、追っ払ってくれよ
ほったれ、おまえも手伝うんだ こてぇ そうとも、もちろん おまえも手伝うんだよ
そんげえな縛り方をするとほっとかんねぇ そんな縛り方をするとほどかれない
樽のほてに おえてくれ

      (古語→ホカテ)
樽のに置いてください
ほてっちょに、よしておえて くれや

に、寄せておいてください
ほてっつらして、あんでるすけ、ころぶんどう よそ見をして、歩いているから、転ぶのですよ
女しょは、正月中、ぼとぼとしなければならんがね 女衆は、正月中、忙しくお客の接待をしなければ成りませんよ
ばさ、ミカン一つ、ほどこへ えれて えって くんなせぇ おばあちゃん、ミカン一つ、へ入れて行ってください
ええ、ほに、そえぇがん だっけなえ

      (本に)
ああ、ほんとだ、そういうのだったね
そら、ほにほに、みじょげだなえ それは、ほんとうにほんとうに、かわいそうだねえ
ばさ、きょは、ほびきして おもしょかった のし

      (宝引き)
おばあさん、今日は、ほうびきして楽しかったね
おらアネは、えま、奥の部屋でぼぼを寝かしつけて、えるえね

     (古語→オボ→生む)
家の嫁は、今、奥の部屋で赤ん坊を寝かしつけて、いますいね
なんだやら この頃、オラ、なんかが ぼぼけて よう めぇねんだてえ どうしたのか この頃、私、物がぼやけてはっきり見えないのですよ
なんだやら、この猫は、ぼぼけてきたなえ

なんだか、この猫は毛並みが悪くなってきたね
ぼぼさまの桑とりに、山へ えって来るえね む

      (御−)
の桑とりに、山へ行って来ますよ
ほれか、オラァが子どもんどき 遠足に えったエタヤマのエケの近くに何度かんじょうしても、数が合わんズドウサマがあったこてぇね
ほら、僕たちが子どもの頃、遠足に行った板山の池の近くに何度数えても、数が合わない石仏があったでしょう
ほろの戸を、閉めておかんと、猫が へぇるぞ 戸棚の戸を、閉めておかないと、猫が入るよ
盆がえもんに、かどてまでえってくらぁ お盆の買い物に,門出まで行ってくるよ
いい子にしてると、ぼんぎもん縫ってくれるぞ よい子になっていると、お盆用の着物を縫ってあげるよ
十五夜には、お宮の参道に ぼんぐえが 立ちますえね 秋祭りには、神社の参道に幟竿が立ちますよ
ねら、盆草とりしてくれや あんたがた、盆を迎えるための家の周りの草取りをしてくれよ
ねら、きょはほんこで、玉ぶちするか

      (本・接尾語)
きみら、今日は本勝負(当てた球は自分のものとする)でビー玉するか
え、ほんだ、そうえがん だっけぇねえ ああ、ほんとだ、そういのでしたね
ほんだえね、そんげぇなこと、出来っこ ねえがねぇ ほんとですよ、そんなこと、出来っこないですよ
ほんだがぁなぁ 本当ですよ〔そのとおり〕
このぽんくつ このまぬけもの
ほんのことを えうと、おら、ゼンが なかったんだえね

      (本 →まこと)

本当のことを言うと、俺、お金がなかったんですよ
きょは、お宮さんとポンポ小屋のエキ堀りをしてくんなせぇ 今日は、神社とポンプ小屋(消防小屋)の除雪をしてください
ケサん なっても、まだ、ホドのへえぇ がぼんぼらあったかえね

今朝になっても、囲炉裏の火床の灰が、かすかに温かかったですよ
なんだかほんぼろがれぇようだなえ なんだか、少し辛いようだね